賃貸需要の正しい把握・予測は、不動産会社にとってもっとも重要なことのひとつです。正確に需要を把握することは、家賃・賃料を正しく設定することにつながります。しかし現在に至るまで、ベテランの経験と勘による需要予測を行っている不動産会社も多いようです。これでは顧客に不透明感から不信感を与え、長期的に見れば収益を低下させるリスクも少なくありません。そこで重要なのが「人流データ」の活用です。人流データの特徴や有効性を把握して活用することで、賃貸需要を正確に把握・予測し、データに基づいた家賃・賃料の設定が可能になります。顧客満足度を向上させ、利益の最大化にもつながるでしょう。ここでは、賃貸需要把握の現状と不動産業界における人流データの重要性、さらに人流データの取得方法や活用例などを紹介します。賃貸需要を正しく把握するメリットとは「賃貸需要」とは、その地域の住居や商業物件などの賃貸物件に対する需要のことです。その地域の賃貸需要が高まると、家賃・賃料が上昇するという相関関係があります。そのため、不動産会社にとって賃貸需要を正しく把握することはとても重要です。賃貸需要の正確な把握・予測には、不動産会社にとって欠かせない、次のようなメリットがあります。収益の最大化賃貸需要を正確に予測できれば、適正な家賃・賃料設定が可能です。適正な賃料を提示することで顧客満足度が高まり、成約率が向上します。ひいては収益の最大化にもつながるでしょう。空室リスクを低減上記と同様に適正な家賃・賃料設定によって契約の継続率を高め、空室リスクの低減につながります。マーケティング戦略の最適化賃貸需要を正確に把握できれば、その地域の住民の属性も推定されます。マーケティングのターゲットやチャネルを適切に選定でき、より最適化されたマーケティング戦略を立てることが可能となるでしょう。投資判断の精度向上賃貸需要を正確に把握することで、正確かつ緻密な物件の収益シミュレーションを行うことが可能になり、不動産投資に対する判断の精度が上がります。家賃・賃料設定の現状賃貸需要を決める要因には、次のようなものがあります。人口の動向人口の増減、どのような形態の世帯が多いか、どのような年齢構成比になっているのか、など周辺環境公共施設は揃っているか、どのような商業施設があるか、など交通インフラ鉄道やバスの利便性はどうか、道路は整備されているか就業機会周辺に雇用環境が揃っているか、人口とのバランスはどうか、などただし、現状の家賃・賃料設定は、これらの要素から合理的に賃貸需要を推計しているとは言えません。多くは、近隣の類似物件の家賃水準や近辺の地域情勢を基にして、不動産会社の長年の経験や勘に基づいて決められています。しかし、それでは家賃・賃料設定の基準について明確な説明ができません。また、敷金・礼金など古くから残る業界独特の慣習もあいまって、顧客が不信感を感じ、顧客満足度が低下することも考えられるでしょう。そのため不動産業界では、家賃・賃料はデータに基づいて合理的に設定すること、それを明確に顧客に説明できるようにすることが大きな課題となっています。賃貸需要の予測に注目される「人流データ」そこで、家賃・賃料設定の根拠のひとつとして近年不動産業界で注目されているのが「人流データ」です。人流データとは、人の行動や移動の傾向やパターンを収集したデータのことで、スマートフォンのデータを基にしたものが多く、年齢・性別などの属性情報も付属しています。人流データを活用すると、特定の時間と場所にいる人がどのように移動しているのか、どのような行動をしているのか、などを大きな傾向として把握することが可能です。不動産業界においては、人流データを利用して特定の地域の人がとる行動パターンを分析することで、将来の賃貸需要、さらには賃貸相場の変動を予測し、適切な家賃・賃料設定を行うという試みが始まっています。詳細は、次のページを参考にしてください。「人流データとAI査定で物件価値を ビジュアライズ/プライスハブルジャパン様」人流データの取得方法近年のスマートフォンの普及によって、よりきめ細かく具体的な人流データを活用することが可能になりました。これは、スマートフォンの位置情報機能から、許諾を得たユーザの位置情報を収集できるようになったためです。人流データを利用するために自社で人流データを取得する方法もありますが、あらたにデータを取得するところから始めるのは大変です。既存のデータを利用するのが現実的と言えるでしょう。利用できる既存のデータには、無料のものと有料のものがあります。無料で利用できるオープンデータ国土交通省は、無料で利用できるオープンデータとして、一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会のサイト「G空間情報センター」で「全国の人流データ(1kmメッシュ、市町村単位発地別)」を提供しています。全国の人流データ(1kmメッシュ、市町村単位発地別)を公開します|国土交通省また、そのオープンデータを活用する方法についてもG空間情報センターでさまざまな例が示されています。無料である一方、データは既定の期間、エリア、時間帯で集計された汎用性の高いもので、目的に合わせて活用するには、加工や分析に一定のスキルやノウハウが必要です。有料の人流データ提供サービスより目的に合った人流データを希望する場合は民間の人流データ活用サービスを利用する方法もあります。料金はかかりますが、エリアや時間帯を限定する、あるいは特定の条件に基づき抽出したデータのみを用いて、より目的に合わせた分析等を行うことができます。さらに、他のシステムと連携して活用することも可能です。また、民間のデータ提供サービスでは、誰もが簡単にデータを扱えるようにするための、操作画面やアプリケーションも提供されています。人流データの不動産業界での活用例人流データがどのように活用されているのか、賃貸需要に影響を与える要素から具体的な例を紹介します。都市計画人流データにより、人口の動向を自治体ごとに把握することが可能です。これを基にして自治体の都市計画が作成されます。たとえば、都市開発や宅地開発、交通網の整備、公共施設の整備、防災計画、観光施策などです。商業施設の出店計画、テナント選定人流データにより、商圏分析などのマーケティングが可能です。これを基にして商業施設の出店や改装などが行われます。また店内での人流データにより、消費者の購買行動を把握することが可能です。それを基に、テナントの選定や配置、さらに商品の選定や配置が行われます。不動産投資人流データから物件の利用状況を可視化できます。それを基に、投資家が物件を購入するかどうかの判断が行われます。人流データの活用方法については、次の記事も参考にしてください。「人流分析で何ができる?活用の場はどんどん広がっている」「位置情報で未来は予測できるのか?ビッグデータを活用した需要予測・混雑回避とは」まとめ:賃貸需要の把握には人流データが不可欠 今後は不動産業界全体で人流データの活用が期待される人流データを利用すれば、データに基づいて賃貸需要を把握できます。今もなお「不動産会社の長年の経験や勘」に基づいた需要予測が主流です。しかし、人流データを利用すれば、従来よりも緻密で正確な予測ができます。家賃・賃料設定にも根拠を持たせることができ、顧客満足度の向上から収益の最大化につなげることもできるでしょう。さらに、人流データは都市計画や商業施設の出店計画、不動産投資などにも使われます。これらはいずれも賃貸需要に大きく影響を与える要素です。人流データの取得・分析には、国土交通省が提供しているオープンデータも利用できますが、使いこなすにはデータ分析やITに関するスキルが必要です。民間サービスを利用することで、誰もが簡単に個々の需要に見合ったデータを活用したり、分析結果を取得したりすることが可能になります。人流データを可視化するツールやアプリとしては、ブログウォッチャーの「プロファイルパスポートDMP」がおすすめです。許諾を得たユーザから取得した、スマートフォンの位置情報データを蓄積し、分析やデータ連携等に活用できるサービスです。人流解析、商圏分析、来店効果検証、競合分析など、様々な用途で利用されています。プロファイルパスポートDMP | ブログウォッチャー%3Ciframe%20width%3D%22560%22%20height%3D%22315%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F_63ZEb8bHC8%3Fsi%3DazpDtNNjKUL44lRO%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E