スマートフォンやモバイルパソコンの位置情報を活用した「ジオターゲティング広告」が注目を浴びています。昨今の広告配信は、一般大衆向けのものから、年齢、性別、嗜好といった特定の条件を持つグループを対象とした広告へと、徐々にセグメントを小さくしながら配信されています。ジオターゲティングの利用によって、従来よりもさらに個人の嗜好に合わせた広告を配信することが可能になります。ジオターゲティングの概要や仕組み、ジオターゲティング広告のメリット・デメリットについて解説します。ジオターゲティングとはジオターゲティングとは、スマートフォンやモバイルパソコンの位置情報をもとにユーザーを絞りこむターゲティング手法のことです。ジオターゲティングは、IPアドレスやGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)、Wi-Fi、通信基地局などから、ユーザーの位置情報をリアルタイムに取得します。この位置情報は、ほかのデータやサービスと組み合わせることにより、さまざまな利用価値を発揮します。ジオターゲティング広告近年では、ジオターゲティングの位置情報をマーケティングに利用し、ユーザーの嗜好に合わせた広告を適時配信できる「ジオターゲティング広告」への活用が進んでいます。ジオターゲティングはユーザーの行動履歴を追うことができるので、この情報からそのユーザーに適した広告を配信し、サービスへの認知拡大や潜在層を顕在化させることが可能です。ジオターゲティング広告の特徴は、過去に特定の場所に行った履歴からユーザーの嗜好を分析し、それに適した広告を、直接ユーザーに届けられることです。たとえば、特定のライブハウスや楽器店、練習スタジオに頻繁に通った履歴のあるユーザーは、「音楽好き」で「ライブ好き」、「なんらかの楽器を演奏する」、「楽器に興味がある」などと予測できます。このユーザーに向けて、Web広告で楽器やライブの広告を配信すれば、より精度の高いマーケティングが実現できます。ジオターゲティング広告の仕組みここでジオターゲティング広告の基本的な仕組みを確認しておきましょう。ジオターゲティングに使われる位置情報の取得方法は、主に以下の5つです。ビッドリクエストビッドリクエストとは、Webサイトの広告にアクセスしたユーザーに対して、広告主がどの程度の金額で入札(Bid)を行うのか、広告主のDSP(Demand Side Platform)に対して問い合わせることをいいます。ビッドリクエストにはCookieやIPアドレスなどのユーザー情報が含まれており、これをジオターゲティングに利用するのです。ただ、ビッドリクエストに含まれる位置情報は、網羅性(データ量が多い)はあるものの、空間的な精度(市区町村レベル)と時間的連続性(リアルタイム性)が低いため、利用場面は限られます。GPSカーナビゲーションシステム(以降、カーナビ)にも使われている、「GPS」を使って位置情報を取得する方法です。もともとは、アメリカ合衆国によって打ち上げられた衛星(ナブスター衛星)を利用していましたが、現在では日本製の準天頂衛星システム「みちびき」も運用開始となり、より精度の高い位置情報の取得が可能になっています。GPS受信機は、カーナビのほかにもスマートフォンやスマートウォッチなどにも搭載され、多くの人に利用されているため、利用価値の高い位置情報が取得できます。GPSから得られる位置情報は時間的連続性に優れ、精度も数メートルから数十メートルと実用性の高いものとなっています。*GPSについては、「意外と知らないGPSの仕組みとは?位置情報を測定する仕組みから用途まで詳しく解説します!」を参照ください通信基地局通信基地局とは、携帯電話やスマートフォンが通話やデータ通信を行うために設置されている通信設備のことです。この通信設備は、通信サービスを提供している各キャリア(NTTドコモやソフトバンクなど)が設置して運用しています。一方、携帯電話やスマートフォンは、移動局と呼ばれます。ジオターゲティングでは、通信基地局と移動局の間の距離から位置情報を推測して利用します。この取得方法は時間的連続性に問題はないものの、空間的精度が数百メートル程度とGPSに比べて低いです。Wi-Fi近年Wi-Fi(無線LAN)の受信機は、ほとんどのスマートフォンやモバイルパソコンに搭載されています。街中にはさまざまな企業や店舗が設置しているWi-Fiスポットがあり、ここから得たデータをユーザーの位置情報推測に活用します。Wi-Fiは時間的連続性ではGPSにおよばないものの、誤差は数メートルと非常に精度の高いものとなっています。店舗への来店など、狭いエリアでの位置情報推測にはとても利便性の高いジオターゲティング手法だといえるでしょう。ビーコンビーコンには、いくつかの規格と種類があります。古くから航空機や船舶などのナビゲーションにも使われていますが、ここでは広く普及している、Bluetoothを使ったiBeacon規格のビーコンを取り上げます。このビーコンは、Bluetoothの電波を使い自機固有のID情報などを一定間隔で発信する端末です。この端末を店舗内などに設置すれば、対象となるアプリをインストールしたユーザーのスマートフォンにクーポンを送るなど、さまざまな活用が可能になります。Wi-Fiより時間的連続性は低いですが、誤差は数メートルと精度が高く、Wi-Fiと同様に利便性の高いジオターゲティング手法です。ジオターゲティング広告は、このようなジオターゲティング手法を単独で、または複数組み合わせて使い、ユーザー一人ひとりに対して広告配信を行うことができるのです。*ビーコンについては、「ビーコンを使ったマーケティングとは?ほかの通信機器との違いと活用方法」を参照くださいジオターゲティング広告のメリットとデメリット最後に、ジオターゲティング広告のメリットとデメリットを確認しておきましょう。メリット詳細なターゲティングが可能ジオターゲティングの手法を用いれば、エリアを限定して顧客に最適な広告を配信できるようになります。ターゲティングを細分化することが可能なため、コストを抑えた効率的な広告配信が可能です。たとえば住宅販売の場合、商品単価が高額なため、一度の商談で購入にまで至らないケースがほとんどでしょう。そのため、効率的に営業活動を行うには、購入する可能性の高い見込み客に絞ってアプローチをかけなければなりません。このような場合、住宅展示場をエリアに定め、位置情報と性別、年齢などからターゲティングを行います。「住宅展示場に過去3ヶ月以内に来訪」している「30代」の「女性」のように細分化するのです。これによって、住宅購入に興味があり、年収も安定しつつある見込み客に効率的にアプローチすることが可能になります。広告の効果測定が可能配信した広告がどのような効果を上げているか、商品やサービスの売り上げを見てある程度は判断できます。Web広告であれば、インプレッション(表示頻度)とクリック数、コンバージョン(成約)を比較して、広告の効果を把握することが可能です。しかし、実店舗への来客数と広告との関連性を判断することが、これまではできませんでした。ジオターゲティング広告を使えば、広告を見た顧客が実際に来店したかどうかを判別することができるため、実店舗でも広告の効果測定が可能になります。この結果からPDCAサイクルを回せば、よりユーザーニーズに合った効果の高い広告配信を行えます。潜在顧客の顕在化ユーザーの行動履歴を分析して嗜好を分析し、自社店舗のエリア内に入ったことのあるユーザーに対してWeb広告を配信できます。このような広告配信は、従来のチラシやDMでは行うことができません。ジオターゲティングによるユーザーの行動分析によって、潜在的な顧客を顕在化させることができます。デメリットコンバージョンには別の工夫も必要ジオターゲティング広告は、商品やサービスの認知拡大や潜在層の顕在化を得意とする広告手法です。広告だけで成約率が向上するわけではありません。申し込みや購入率の向上には、別の工夫を考えておく必要があります。過度なターゲットの絞り込み詳細なターゲティングが可能だからといってターゲットを絞り込みすぎると、広告の対象がニッチになりすぎて、配信量を担保することができなくなります。過度な絞り込みは避け、適度にターゲティングすることが必要です。結果分析の難しさジオターゲティング広告の配信結果と来店実績を考慮した改善点の洗い出しなど、情報の分析には専門的な知見が必要になります。ジオターゲティング広告を効果的に運用するのであれば、実績を豊富に持つ企業と協業することが必要です。ジオターゲティング広告は顧客の認知拡大に効果大!上記のようなデメリットもいくつかありますが、ジオターゲティング広告は顧客の認知拡大や潜在顧客の掘り起しに高い効果のある広告手法です。位置情報を取得する技術の進化により、ジオターゲティングの精度は日々向上しています。広告の効果を最大化したいと考えているなら、ジオターゲティング広告の積極活用を検討してはいかがでしょうか。株式会社ブログウォッチャーでは、スマートフォン向け位置情報データサービス「プロファイルパスポートAD」を提供しています。詳しくはこちらからサービス内容をご確認下さい位置情報サービス プロファイルパスポートAD|株式会社ブログウォッチャー