まずは『電力×需要予測 〜基礎編〜』を読む近年、電力業界における需要予測の重要性が増しています。電力消費量の増加に加えてクリーンエネルギーの導入など、発電調整を困難にする要因が増えているためです。ただ、需給が逼迫するなかでより正確な需要予測が必要とされる一方で、需要予測に絡むさまざまなファクターは複雑さを増しています。予測の精度を向上させるためには、さまざまな種類のデータを十分に用意する必要があります。ここでは電力の需要予測についての概要と、需要予測に必要なデータの種類、需要予測の精度を向上させるために抑えるべきポイントなどについて紹介します。電力業界における需要予測の重要性最近は化石燃料による発電だけでなく、太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーの利用も増えてさまざまな発電方法を組み合わせることが普通になってきました。また、地球温暖化の進展やIT機器の使用量増加、テレワークなど働き方の変化により、電力の需要パターンは大きく増加しています。需給が逼迫するなかで、電力量の予測はより重要になっているのです。需要予測とは需要予測とは、過去のデータを基に、将来の需要を予測することです。あらかじめ需要を予測することで、在庫切れや過剰生産を防ぎ、商品やサービスを必要なタイミングで必要なだけ消費者に供給することができます。需要予測は製造業、小売業、流通業などさまざまな業界で導入されています。これまでは人口などのマクロデータや過去の天候、担当者の経験則などをもとに需要パターンを予測してきましたが、最近では、AIを利用した需要予測も増えています。電力業界でも需要予測が重要電力業界でも需要予測は非常に重要です。そこには、次のような理由があります。電力需要を伸ばす要因の増加デジタル化、地球温暖化、さらに空調設備の普及などで、基本的な電力需要は大きく伸びています。また電力需要は夏や冬といった季節に大きく左右されるほか、天候の影響でも変動します。特に近年は気候変動の影響で、天候パターンが読みにくくなっています。そこで電力不足を起こさないためにも、需要予測が重要です。需要予測の複雑化地球温暖化の防止やSDGsへの取り組みなどから、エネルギー消費量の削減や化石燃料からの脱却が求められています。再生可能なクリーンエネルギーの導入も進んでいますが、太陽光発電などは天候による発電量の変動もあるため、電力供給を安定化するために多様な発電設備を組み合わせる必要があります。そのためには、適切な需要予測が不可欠になります。人口動態による需要の変化世界中で都市化が進み、地方から都会への人口流入、人口集中が起きています。都市の人口が増加すると、周辺地域での産業活動も盛んになり、多くの電力が必要となります。近い将来の慢性的な電力不足を起こさないために、中長期にわたる電力需要予測が求められています。電力需要予測のメリット需要予測を行うことで、次のようなメリットがあります。電力不足を起こさない必要な電力量を予測し適切に確保できるので、電力不足を防ぐことができます。発電調整が可能になる需要に合わせて適正量を発電することで、過剰な発電を防止できます。調整作業にかかる人的負担の軽減にもつながります。電気料金を適正化できる無駄な発電がなくなるので、発電にかかるコストを抑え、電気料金が上がりすぎることがありません。設備投資を適切に行うことができる長期的な需要予測ができれば、設備投資計画を立てやすくなります。電力の需要予測に必要なデータ需要予測を行うには、過去の電力需要データをはじめ、直近の気象や経済、人口などに関わるマクロ的なデータも必要です。複数のデータを組み合わせることで、予測の精度を上げることができます。電力の需要予測に必要な具体的なデータには以下のようなものが考えられます。過去の電力需要データ過去の需要実績は、電力需要の傾向や季節、時間帯など影響が含まれた情報です。蓄積されたこれらの情報がベースとなり、他のデータと組み合わせて電力需要を予測します。気象・季節データ電力需要は季節や気候によって大きく左右されます。夏の暑さや冬の寒さは、冷暖房の使用量を増大させ、電力需要に大きな影響を与えます。今年の夏のように気候変動の影響から例年にはみられなかった気象パターンも起きていますが、それでも過去の気象データをもとにした予測は重要でしょう。ほかにも、湿度、日射量、降水量などの関連データは多岐にわたります。カレンダーデータ曜日や祝日・大型連休、年末年始などのイベントのことです。カレンダーデータは、人々の行動パターンを変化させることで、電力需要に間接的に影響します。例えば、平日や休日、また1日の中でも時間帯によって電力需要パターンは異なってきます。住宅地やオフィスエリアなど、地域間でも昼夜の人の行動パターンは大きく異なり、電力需要に反映されます。また、夏休みや冬休み、ゴールデンウイークなどの長期休暇は電力需要に大きな影響を与えます。家庭やオフィス、商業施設、工場、観光地などの電力需要を増減させる要因となります。クリスマスや年末年始などのイベントも同様です。経済関連データたとえば、経済成長率や失業率、景気動向指数など経済指標、為替相場などです。大口の電力需要家の動向は、景気に左右されます。景気が好調で経済活動が活発になると、工場や商業施設の稼働率が高まり、電力需要が増加します。一方、景気が悪化して経済活動が停滞すると、工場や商業施設の稼働率が低下し、電力需要が減少します。円安が長期化すれば、海外で生産していた製造業が国内に回帰して、電力需要が増えることもあるかもしれません。人口データ人口や世帯数、世帯人数などの人口動態も電力需要に影響します。人口が増加すると、世帯数の増加や法人向け需要の活発化で電力消費が拡大するものです。また、都市部と地方では人口の違いから電力需要に差が出てきます。都市部では、商業施設やオフィスビルなどの電力需要が大きい傾向があります。社会情勢の変化在宅勤務の広がりや働き方改革による残業抑制や省エネ家電の普及といった社会情勢の変化も電力需要に影響します。需要予測の精度を上げるポイント需要予測はあくまで予測なので、100%完璧な予測は不可能です。しかし、次のようなポイントを押さえることで精度を上げることはできます。基準とする項目を決める基準となる項目を決めます。電力であれば、地域、曜日や時間、天候などです。基準を決めることでデータ収集や分析が最小限になり、分析の焦点も明確になることで精度が向上します。AIの活用データ分析にAIを利用する企業も増えています。AIの導入には次のようなメリットがあります。正確な現状把握AIを利用すれば膨大なデータを素早く分析し、現在の状況を正確に把握して、より高度な分析・予測が可能になります。業務効率化、人手不足の解消AIを利用すれば、人の作業は最小限にして自動的に高度な分析が可能です。これは業務効率化や人手不足の解消につながります。スピーディーな意思決定迅速かつ自動的に高度な分析を行えるので、意思決定までの時間を削減できます。ビッグデータの活用AIを十分に活用するためには、目的に沿った大量のデータ(ビッグデータ)が必要になります。これは、AIに学習させるための教材となるデータです。学習データが少なければ、分析の精度が下がってしまいます。さらに、学習に利用するデータの質を確保することも重要です。データの質が低いと、やはり分析の精度も下がってしまいます。人流データと組み合わせる人の行動パターンを高い精度で把握できる「人流データ」の活用は、他のマクロのデータと組み合わせることで、より緻密な需要予測を可能にします。人流データは、スマートフォンから取得した膨大な位置情報を集計し、時間単位の移動常用や滞留時間などです。人流データを活用した需要予測は、分散型電源の普及に役立つと期待されてます。分散型電源は天候などの自然条件に左右されやすい再生可能エネルギーが主力で、電力需要を正確に予測し、発電のための稼働を調整する必要があります。人流データの活用は、地域の電力需要のきめ細かな予測を可能とし、電力の需給バランスを適正化することができます。また、人流データは、電力を使用する交通手段への需要を予測するために利用できます。そこから電力需要を予測することも可能です。人流データについては下記の記事で詳しく説明しています。→人流分析で何ができる?活用の場はどんどん広がっているまとめ:需要予測には多様なデータを利用するが、人流データを組み合わせるとより効果的に電力業界の需要予測は非常に重要です。需要予測が甘ければ停電が起きることもあり、社会的にも大きな影響を与えるでしょう。正確な需要予測には、十分な量と質のデータを収集し分析を行うことが効果的です。しかし、自社の調査だけで十分な量と質の人流データを集めることは難しいものです。従来はマクロデータとして時期、過去の天候、市場の状況などを利用していました。ここに人流データを組み合わせることでより人の行動が明確になり、正確な需要予測を行うことができます。株式会社ブログウォッチャーの「プロファイルパスポートDMP」は人流データをさまざまな分析に活用することができるサービスです。。詳しくは公式サイトをご覧ください。Profile Passport DMP | 株式会社ブログウォッチャー『電力×需要予測〜基礎編〜』を読む